くるみ亮「私を笑わないで」を最終話まで読んだ感想

自分語りを含めた感想ですのでご注意ください。それとネタバレにも。

 

 

「私を笑わないで」感想

第1話~第31話

私は最初、愛莉派だった。自分もストレスで食べ過ぎるタイプだからだ。

もうひとつだけ……と言いつつも全部食べてしまうシーンは特に辛い。我慢出来ないくらい激しい食欲に襲われる愛莉に、わかるわかると頷いた。

 

ひかりのことははっきり言って嫌いだった。

痩せてボロボロなひかりより、「太りたい」「(肌が荒れたのは)痩せたせいかもしれない」と言うひかりに対して複雑な表情を浮かべる愛莉を心配したくらいだ。

流石に38キロになって頬がこけた姿はヤバいとは思ったけれど、それでもひかりには批判的で、愛莉にばかり肩入れしていた。

  

この頃はひかりを助けた高岩くんのことも信用ならなかった。学生アルバイトとアルバイト先の正社員が同棲ってまずくないかとか、ひかりはまた衝突起こしそうだから一人暮らしのほうがいいんじゃないかとか色々。

しかも高岩くんの親には内緒で同棲してるので、もしも親バレして反対されたら高岩くんひかりのこと捨てるんじゃないのかとか、とにかく疑ってかかった。

この頃の高岩くんのお母さん(電話越しでしか出てこない)はかなり過保護な印象だったしね。今思えばひかりが嫌いだった故の感想かも。

 

第23話は焼肉屋の店長が言ってることにモヤモヤする。自分で量を調整できないお店のメニューの食べ残しと、ある程度融通の利くまかないを捨てたことをいっしょくたに考えるのは違うと思う。

とはいえひかりはまともな判断ができないくらい参っているので仕方ない部分があり、彼女が悪いとは思わない。それを批判する浜田君が悪いとも思わない。でも店長は大人気ないと思う。

「食べきれなくて捨ててしまう人をあまり責めないでほしい」この一言で十分なのにあんなにクドクドお説教しても何も響かない。

 

第32話~第60話

透夜くんが登場して、ついに愛莉も救われるのだとすごく嬉しかった。透夜にススメられるがまま、愛莉はダイエット薬・FFDに手を出す。愛莉は痩せて嬉しそうだった。でも幸せそうではない。

この頃からだんだん愛莉のことがわからなくなってきた。何を考えているのか、笑っているのか泣いているのか。見た目の印象がかなり変わった(可愛い系が美人になった)のも大きい。

ひかりはしばらく出番がなかったけど、それでも思ったことは、愛莉はひかりとルームシェア解消してよかったんじゃないかということ。

愛莉の母親は酒と男に依存していたから、ひかりのことはそこまで嫌いじゃなくても、男と酒飲んで帰って来られたら母親を思い出してイライラもするんじゃないかなあ……と。

 

第61話~第76話

いきなり1年経って驚いた第61話。すっかり健康的になったひかりは結婚妊娠出産と怒涛の勢いで幸せそう。愛莉は不幸なのにひかりばっかり……と思ったらそうでもなく。

過食に走るひかりを見て、私が思い描いていたひかりと違うなと思った。ひかりが過食に走ったことで、簡単に痩せられるからいいよねという歪んだフィルターが外れ、痩せられない・痩せた以外に焦点を当てられた。

愛莉に向かって太りたいなんて酷いって思ってたけど、極限に追い込まれたら自分のことしか考えられなくなるよね……。

読み返すと、前は何とも思わなかった元カレや職場の女性2人(第24話で食べる量を指摘してくる人たち)に何も言い返せないシーンに、私まで悔しくなった。

第67話なんて可哀想すぎていたたまれない。助産師の顔にあんまりにも腹が立つんでこの回は読み返すのが苦痛だ。

 

第77話~最終話

ついに再会を果たすひかりと愛莉。ここからまたひかりが怒涛の勢いだった。

愛莉と再会するだけでなく、義母に優しい言葉をかけてもらって人に頼ることを覚えたり、ひかりはいっきに成長していった。

あんなに不安定だったひかりがみるみるたくましくなっていく様はすごく気持ちがいい。

 

第84話からはもう涙が止まらない。第5話の「わたしが辛い時はひかりがわたしの『お母さん』になってね」から何年、ひかりはついに愛莉のお母さんになったのだ。

第78話で愛莉に「ひかりはママになったんだから」と言われたひかりが、今度は愛莉のママになる。すごく素敵じゃないか。

 

最終話はハッピーエンドでよかった。

ハッピーエンドだったけど、ひかりも愛莉も何かしらの後遺症が残り、そしてまたあの地獄を味わうのではないかと怖がっていたりと、摂食障害の恐ろしさを匂わせている。

でも、これからのひかりと愛莉なら、地獄に落ちる前にきっと助けを求められるはず。そうだといいな。

 

ひかりの摂食障害は代償行為?

ひかりの摂食障害は、感情を言葉にできなかった代償行為のように思えた。元カレへの抗議のような拒食、傷ついたことを主張するための拒食、助産師から感じた母親の影を否定したいがための過食・チューイング……。

だからこそ、言葉で伝えられるようになった終盤のひかりはとても強く頼もしい人に見える。

 

予想していた結末

ひかりと愛莉は仲直りするどころか再会もしないんじゃないかと思っていた。

何なら愛莉死亡という最悪の結末を迎えるのではないかとも。心臓発作→立ちくらみ→こけて骨折→骨粗しょう症。この流れに本気で命の危機を感じた。

よりによってひかりの苗字が青山(おやま)だったので、愛莉の連絡先の一番上にいるであろうひかりへ真っ先に連絡がいって最悪の再会を迎える……なんて。この予想が大外れでよかった。