「累-かさね-」最終巻の感想

最終巻発売から約一年、発売直後に読んだときは、とにかくすごくモヤモヤしたけど、最近また読み返してようやく気持ちに整理がついたので感想を書きました。

 

「こんな風に終わるなんて」

当時はモヤモヤの意味がよくわからなかったけど、たぶん、こんな気持ちだったんだと思う。

ニナとして、咲朱として、あんなに輝いていたかさねがこんなにあっけなく終わってしまうのか、と呆然としていた。

終わるまでの過程も散々だった。素顔で舞台に立ったかさねは台詞を読み上げるのがやっとで、ものになってきたかと思えば初日よりはマシって程度、ニナや咲朱のような存在感も演技力もない。

あのかさねがなんて情けない……と、とても悲しかった。

 

その後なんやかんやあり、最終的に舞台そのものは拍手喝采に終わった。でもかさねには何も残らなかった。ニナの母親に「かさね」を奪われたからだ。

ニナだって共犯なのに。ずっとそう思っていたけど、読み返せば読み返すほど、終わり方に納得がいった。

確かにニナも共犯だった。でも問題はそこじゃない。植物状態で意識不明になった後も利用したことが問題なのだ。ニナも共犯と言えるのは植物状態になる前のことだけ。

これは海道与にも似たようなことが言える。彼も愛した女が幻だった、っていうのは本当に不憫だから、いざなや淵透世にしたことは仕方がないと言える。が、かさねや野菊まで巻き込んだことは決して許されない。